サブマージ・サマー

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「ならなっちゃんが買ってきてよ、俺の分も。ここで待ってるから」  また遊ばれた。わたしは七瀬のおもちゃじゃないのに。  乱暴に狐のお面を外し、七瀬に向かって投げつける。でも立ち上がって、近くの屋台まで歩いて行く。振り返ると、七瀬はひらひら手を振っていた。知らない。七瀬の分のたこ焼きなんて、おじさんに頼んでわさびを入れてもらってやるんだから。  七瀬が好きなマヨネーズを屋台のおじさんにたっぷりかけてもらい、ついでに他の食べ物も買ってから戻ろうと思ったから白い袋に入れてもらう。香ばしい匂いをさせているイカ焼きも、その中に入れる。袋は腕にぶら下げ、左手にわたあめを持ち、電球ソーダを買おうと少し長めの列に並んでいた時に、とうとう声を掛けられた。 「かわいいね、ひとり?」  髪は七瀬と似たような黒色で、でも、頭髪剤で一生懸命セットしたような、固まった髪。好きじゃない。そういうヘアスタイルのお兄さんが、二人。 「今はひとりです」 「そっか、こんなに大荷物で大変だね。お兄さんたちが一緒に運んであげるよ」 「持ててます」 「大丈夫大丈夫、ほら、行こうよ」
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