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雛子はまじまじとそれを見る。先程とのツルツルした手触りが変わっている。ザラザラしたそれは、観光地で売っているような絵葉書を半分に切った物だった。
「そういえば、このお花ってなんですの?」
「秘密です」
逢坂は雛子の手に日傘を握らせる。
「では、お元気で」
「もう帰るの?」
「ええ、今年は楽しいひと夏を過ごせました」
「さっきの花の答え合わせ、いつかしてくれますか」
「ええ」
逢坂はにっこり笑う。
「自分に素直に生きて下さいね」
「…はい」
強い風に目を瞑り、次に開いた時にはもう彼はいなかった。
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