テレカ屋さん2 夏の浜辺にて

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海岸沿いの錆びたガードレールで囲まれた狭い歩道を一列になって歩く。 「手なんか引かれなくても歩けますよ」 「あぁ、ごめんなさい。確かにこれじゃ連れ去ってるみたいだ」 ぱっと手を離す。 雛子はぽつりと呟く。 「それも悪くないかもしれないわ」 「僕は絶対嫌ですよ!捕まりたくないもん」 「冗談ですって。私もお父様から怒られたくないもの」 はるか上空を舞っていたカモメが、空の向こうへ飛んで行った。 「でも、たまに思うのは本当よ。誰かがどこかに攫ってくれないかなぁって」 「夏の暑さのせいですよ」 冗談なのか、適当に流しただけなのか、大真面目に言っているのか──────前を歩く逢坂の表情は見えない。 「きっとそうね────」 雛子は、柔らかく微笑んだ。 海辺の喧騒は殆ど聞こえなくなっていた。車のエンジンを蒸す音と、波の音が鼓膜をかすかに揺らすのみだ。 逢坂がふいに訊ねる。 「暑さに浮かされたついでに、一つ、私の話を聞いて頂けますか」 「?────ええ」 「貴女は神を信じますか?」 「信じるわ。だって皆が信じてるもの」 「天動説は?」 「信じないわ。そう学校で習いました」 「学長は実はカツラだと言ったら」 「……薄々気づいてたけど、やっぱりそうだったのね…」
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