テレカ屋さん2 夏の浜辺にて

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「では──────」 彼は突然立ち止まり、こちらをくるりと振り返る。 「があると言ったら、貴女は信じますか」 急な事に止まりきれず、彼の背中に顔面を強打した雛子はクラクラする頭で考える。 いつにでもどこにでも誰にでも?そんな事がありえるのだろうか。 「タイムマシンとどこでもドアを飲み込んだテレホンカード、って事かしら」 「適当な例えですね。今度私も使おう」 「どうぞ、どうぞ」 適当に、あしらいながら、雛子は考える。 お父様ならきっと信じるなって言うわ。怪しいもの。でも、もし本当だったら──────そう考えると雛子の胸が高鳴るのは、誤魔化しようのない事実であった。 「信じるわ。信じられないけど……」 「それはどっちですか」 「信じたいけど信じられないの。そんな不思議な話聞いた事もないし、見た事もないもの。本当だったらそんなに良いものはないわ」 「なるほど─────」 逢坂はガードレールに寄り掛かり、少し考えた後、納得したように頷いた。 「よろしい。一つ差し上げましょう。もし信じられなければ、ひと夏の魔法とでも思って下さい」 そう言って握りしめた拳を突き出す。手のひらを開くと手品のように一枚のカードが現れた。 「どうぞ」 「─────ええ」 彼の手からカードを取る。プラスチック製のそれは、真夏の火照った手にはひどく冷たく感じた。 「貴女に、3分間の権利を与えます」 逢坂がパチンと指を鳴らす。その瞬間、雛子の手の中のカードが一瞬だけ熱を持った気がした。 「使うも使わないも貴女の自由ですが。3分間、好きな所へおかけ下さい」 そうして逢坂が示した海から少し離れた先には、潮風で錆びた緑色の電話ボックスがあった。
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