#01.そんなあなたと契約するまで/#01-01.失恋、のち、プロポーズ

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#01.そんなあなたと契約するまで/#01-01.失恋、のち、プロポーズ

「……実は、私事で恐縮ですが、山崎さんの子どもを妊娠してまして! 四ヶ月目に入ったところです!」  フロアに、どよめきが起こり、露骨に目を向ける者もちらほら。だが当の彼女は、立っているのが精いっぱいで、……今日は、派遣さんの退職の挨拶を聞いていたはず……いつもいつも、退職する人間が現れるたびに、退職者はこのフロアに勤務する社員全員の前で、挨拶を強いられる。  彼女と、営業部に所属する山崎が恋人関係にあったのは周知の事実だ。よって、その退職者の女性に送られる拍手も、気まずさを伴う、まばらなものとなる。されどさして当人は気にも留めぬ様子で「ありがとうございます」とにこやかに礼を言う。 「えーと。なに言おうかって考えてたんですけど、忘れちゃいました。てへ☆」恋人であり伴侶である山崎に目配せをし、「ここで働いたのは、短い期間でしたけど、お世話になりました。これからは、母として、山崎の妻として、しっかりと家庭を支えていきたいと、思っています。  ありがとうございました。  以上です!」
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