さよならのかわりに。

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さよならのかわりに。

『Gegenangriff(ジーゲンアングラフ)市評議委員会と市民会!及び(おそ)れおおくも抜き身の王剣の御降(みこう)において決を(くだ)す!【Lebensmittel(リーベンスメテール)】の子【 Paylitos(ペイリトオス)】を!死刑に処するものなり!!』  途端に、分厚い市壁を唸らすほどの市民たちの歓声が市中に木霊し、罪人にされた俺の抗命の声を完全にかき消して、この身を包んで石舞台の上に押し潰した。 「立てPaylitos(ペイリトオス)よ!お前は被疑者から死刑囚に身分が変更されたのだ!さあ立て!お前の執行日は三日後の15時05分だ!!」  全身から力が瞬く間に消えていくのすら感じれなくなった体を両脇から抱きかかえられ、俺は放心状態の半ば意識を喪いかけた頭をグラグラさせ足を引きずられて、一枚に纏められた手枷足枷に嵌められた俺は(くら)かわりに麦束を荒縄でくくりつけ載せただけの大きな動物の背に這いつくばり、露天の公開裁判場から惨めすぎる風体で出廷して、そして市民からの罵詈雑言と投石のただ中へと突入していった。  ガン!ゴン!クアン!  市評議会所属の兵士たちが左右に長方形の盾を並べ、絶え間なく降り注ぐ棒切れや石礫(いしつぶて)の類いを防いでくれる。  なぜだ。何故これほどまでに俺は人々から憎まれなければならないのか。  真に憎悪しなければならない奴等が、外の世界にはウジャウジャいるというのに…!!  法廷の広場には民衆の大歓声のもと、四つのデカイ木の車輪をググッググッと地面を削り重々しく回しながら断頭台が運ばれていき、首筋に肌が粟立つ冷や汗が伸びる。  ゴガン!!  次の瞬間、硬く鈍い音と衝撃を後頭部に感じた俺は、即座に昏倒した。  それはまるで、この世とあの世を境目に、無理やり迷い混まされた気がしてならなかった憎しみの一撃だった。
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