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辺り一面に咲き誇る、曼珠沙華(彼岸花の別名称)の花。赤い絨毯を敷き詰めたような神秘的なその場所に二人、佇んでいる。
「阿弥陀如来様、この度は本当にありがとうございました」
白い衣に身を包んだ快活な印象の女性が、流れるような仕草で礼をした。
「本当は一人だけを助けるのはよくないことなのに。それを許可してくださったおかけで、私はあの子に自分の氣を送ることができました」
「貴女にはいつも、迷える魂を救う手助けをしていただいていますから。そんな貴女を助けたいと思うのは当然のことです」
阿弥陀如来と呼ばれたその人は、澄んだ声色でそう返した。美しい金の衣を身に纏い、柔和な笑みを浮かべる。
「しかし、貴女の転生時期がまた遠のいてしまいましたね。他の魂の手助けをすればその分、貴女の魂が救われる日がまた何百年とかかってしまう」
「私はいいんです!あの子が、笑顔で生きてさえくれればそれで」
そう言って浮かべた笑顔は、向日葵のように明るかった。
「琴は、私の可愛い娘ですから。生きてる時は少しだけしか一緒にいられなかった。私には見守ることしかできないけど、どうか幸せに」
ー閻魔大王様と私のお裁き手帳・完ー
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