私という人

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今日の一時間目は、六月にある体育祭についての話し合いだ。 「選手選抜リレーは、百メートル走のタイムが早い人から選んでいくということでいいですか?」 「はーい」 体育委員の男子と女子が黒板の前に立って、大きな声でそう言った。担任の先生は教卓の横にパイプ椅子を置いて座ってる。 「では、次に応援団を決めたいと思います。立候補したい人は手をあげてください」 体育祭の応援団は、そのクラスの目立つグループの人達がやっているイメージがある。私はあんまり得意じゃないから、手はあげない。 思った通り、人気者とかやんちゃな男子とか、彼氏がいるような可愛い女子や運動部で目立ってるような子達が手をあげてた。 「ありがとうございます」 女子の体育委員が、黒板に名前を書いていく。 「あれ、女子が一人足りない」 「誰か、他に居ませんかー?」 男子の体育委員が呼びかけても、皆顔を見合わせるだけで手をあげようとしなかった。 「先生、どうしましょう」 「うーん」 担任の土屋先生は首を捻って考えるポーズをする。バチッと偶然目が合って、私は咄嗟に下を向いた。 「クラス委員長の花巻さんやったらいいのに」 決まらないことにイライラしたのか、既に応援団の所に名前の書いてある目立つ男子が私の名前を出す。 「え、私は…」 「どうかな?花巻?」 土屋先生まで、期待のこもった目で私を見始める。 困ったな、私応援団なんてやりたくないんだけどな…でも皆早く決めたい雰囲気だし、ここで断るとまた話し合わなきゃいけなくなっちゃうし… 「じゃあはい、私やります…」 「ありがとう、花巻」 「さっすがクラス委員長、話早いな!」 「頑張ろー花巻さん」 私の返事に皆が一斉に明るい声を出したから、私は心の中でホッと安堵の溜息を吐いて笑顔を見せた。 良かった、私の選択は間違ってなかった。本当はあんまりやりたくなかったけど、ハッキリやりたくないって言えない私も悪いし… それに挑戦してみたら、案外楽しいかもしれないから。 「クラスでオリジナルのうちわを作ろうと思ってるんですがどうですか?」 応援団や他の種目についても無事決まった後、男子の体育委員が皆に呼びかける。 「いいね、何か青春ぽい」 「どうせ作るならイケてるやつ作りたいね!」 皆、賛成みたい。 土屋先生が、また私のことを見てる気がする。 「うちわは先生が用意するよ。絵具での色付けなんかは手間がかかるから、できればサインペンやマーカーで絵や文字を書いてほしい。誰か、やってくれる人いるかな?」 先生がやっぱりこっちを見てる。きっとさっきのも気のせいじゃなかったんだ。 「あの、私やりましょうか」 おずおずと手をあげると、またクラス中がワッとなる。 流石クラス委員長とか、花巻さん偉いとか、好意的なものばかりでまた一安心。 「でも私絵が得意じゃないから、できれば美術部の人に図案だけでも手伝ってほしいです」 「え…」 「美術部、手伝ってやれよー」 「花巻さんだけにやらせるのよくないよー」 「…分かりました」 クラスにいる美術部の女子二人が顔を見合わせながら、仕方なくといった感じでオッケーしてくれた。
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