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ーーそれから時間は経って、体育祭の前日。今日は授業は二時間だけで、後は体育祭の準備だ。
クラスのうちわも無事完成したし、私も必死に応援団の練習してきたから本番も多分大丈夫。
応援団をする子達の中にあんまり仲良い子が居なくて、練習でもポツンとなっちゃってたのが悲しかったけど。
それでも皆で話す時は普通に輪の中に入れてたし、そもそも応援団に立候補する子達は仲良しグループ皆で手をあげるって子がほとんどだから、仕方ないことなのかもしれない。
「二人とも、ホントにありがとう」
改めて、美術部の二人にお礼を言う。
「正直言って最初は嫌だったけど、今はやって良かったって思ってるよ」
「皆も喜んでくれたし、やっぱり嬉しいね」
笑顔でそう言ってくれるのを見て、心の奥にあった二人への申し訳なさが溶けていくような気がした。
体育祭の準備も終わり、短いホームルームの後皆足早に帰っていく。私も美里ちゃんと一緒に一度は家まで帰ってたんだけど、体操服を袋ごと忘れたことを思い出して一人で走って学校に戻った。
「今日洗おうと思ってたのにー」
一人で愚痴を呟きながら、教室のドアに手をかける。
ガラッ
「っ」
そこには、クラス委員の副委員長・寺町君がいて。
バチッと目が合って、数秒。彼の手元を見ると、私と美術部の子達で作ったクラスのうちわとカッターナイフ。
絵を描いた面の所が、ズタズタに引き裂かれてる。
「て、寺町君…?」
誤解したくないけど、どう見ても現行犯だよね…
「花巻さん…っ」
「それ…どうして…?」
ショックと怖さで、思わず声が震えた。
「ち、違…これは…っ」
目を思い切り見開いて私を見つめる寺町君は、カッターナイフとうちわの入ったダンボールを後ろに隠す。だけど隠しきれなかった一枚が私の近くに落ちた。
「何で?何でこんなこと…」
「いや違うって…だから俺…っ」
ポロポロと涙が零れ落ちる。努力を台無しにされたこともそうだけど、まさか寺町君がこんなことするなんて夢にも思ってなかったから。
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