私という人

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寺町(テラマチ)(シノブ)君は、小学校は別のところで中学二年になって初めて同じクラスになったとても優しい人だ。推薦でクラス委員長になった私は皆の前に立って話すことが苦手で、最初の頃は委員会で決まったことを紙を見ながら報告するだけのことが上手くできなかった。 そんな時は副院長の寺町君が紙を指差しながらさり気なくフォローしてくれて、そのおかげで少しずつ大事なところだけをまとめて伝えられるようになっていった。 寺町君は自分から立候補して副委員長になっていて、手際もよくて仕事も早くて凄く尊敬できて。心の中では、私よりも寺町君の方が委員長に相応しいって思ってた。 私が失敗しても責めないで、一緒に考えようって笑ってくれる。一緒にいると、気持ちがふんわりするような男の子だった。 「…」 そんな優しくて気遣いもできる寺町君が、こんな酷いこと本当にできるかな? 「あの寺町君…これって本当に寺町君がやったの?」 落ちている一枚を拾い上げる。やっぱり、紙のところがカッターでめちゃくちゃに切られてる。 「…」 「もしかして、偶然見つけただけとか…?寺町君じゃなくて他の誰かがやったのを…」 「…」 「寺町君?」 寺町君は下を向いた後、勢いよく顔を上げて。 今までに見たことがないような怖い顔で私を睨みつけた。 「俺が…俺がやったんだよ!!」 大声で叫ばれて、思わず肩がビクンと震える。男子の怒鳴り声が、こんなに怖いなんて思わなかった。 「何もできない癖にクラス委員長だからって威張って…俺の方が委員長に相応しいのに!!」 「て、寺町く」 「こんなの、めちゃくちゃになればいいんだ!」 後ろに隠していたダンボールいっぱいに入ったうちわを、勢いよくひっくり返した。 「困ればいいんだ!!」 そう口にして、寺町君は教室を飛び出す。 「寺町君っ!!」 彼を追いかけようとしたけど、散らばったうちわが目に入って私は足を止めて。 声を出さないように唇を噛み締めて泣きながら、ズタズタのうちわを一枚一枚拾った。
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