心の中にはきっと

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自分から言い出したけど、真横で自分の手帳真面目に読まれるのって冷静に考えたら凄く恥ずかしい。なんとかしたいと思って咄嗟にこんな提案してみたけど、この人からしてみればいきなり他人の手帳なんて渡されて、いい迷惑だと思ってるかもしれない。 「…」 でも、凄く真剣に読んでくれてるから今は何も言わないでおこう。 「ありがとう」 しばらく経って、その人は静かに手帳を閉じて私に差し出した。チラッと顔を見ると、最初よりもどこかスッキリしてるように見える。 「すいません、変なこと言い出しちゃって…」 「いや」 その人は澄んだ瞳で私を見つめて、少しだけ広角を上げた。 「それは、お前自身を現しているのだな」 その言葉に、ドクンと胸が鳴る。閻魔大王も、全く同じことを言ってたから。 やっぱりこの人はーー 「ありがとう。お前にとって大切なものを私に見せてくれて」 「…ヘヘッ」 嬉しくて、でも照れ臭くて。手帳をポケットに仕舞いながら、誤魔化すみたいに笑った。 「私は、唯一無二の友だと思っていた男に裏切られ、そして死んだ」 閻魔大王様に似た人…ううん、きっと本人だと思うから閻魔大王様って呼ぶことにする。閻魔大王様は、私の隣で胡座をかいて、静かに話し始めた。 「そいつは、己の身を守る為に私を嵌めたのだ。私は最後まで、友を信じた。今思えば、何と滑稽なことか」 自嘲気味に、小さく笑う。 「私は絶望し、そして思った。もう二度と、誰かを信じたりはしないと。人間は皆、裏切る生き物なのだと。全ては私が、愚かだったのだ」 「…」 「だが、お前を見ていると何やら不思議な気分にさせられる」 「え?」 そう言って、閻魔大王様は私を見つめた。 「まだ出会って間もない奇怪な娘。だが私は、お前を昔から知っているような気がする」 「…」 「お前を見ていると、人間もまだ捨てたわけではないのかもしれないと思えてくるな。一括りにするべきではないと」 「閻魔大王様…」 「口では悪態を吐きこんな所に閉じこもってみても、私は結局人間という愚かな生き物が嫌いではないのだろう」 閻魔大王様は立ち上がって、真っ白で何もない空を仰いだ。それからまた、私に視線を戻す。 「ところで、先ほどからお前が口にするそのとは一体なんなのだ」 私は目を丸くした後豪快に笑って、閻魔大王様と同じように勢いよく立ち上がった。 「それはまだ秘密です!」
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