もし天国があるのなら

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 ロボットにも、寿命はある。  人間の労働力の補助的な役割を果たすものとして、人型ロボットが開発されて久しい。見た目は人間とあまり変わらないロボット達は、最初の頃は忌避されることもあったが、徐々に人々の暮らしに溶け込んで行った。  医療、介護、物流、農業や漁業はもちろん、人命救助といった危険な作業から、一般家庭の家事に至るまで、あらゆる現場にロボットは浸透していた。  ロボットは機械であるので、パーツを換装したりAIをアップデートすれば半永久的に活動出来る──と考えがちだが、意外とそうでもない。  細かい部品が廃番になって在庫が尽きたり、内部電源のバッテリーが劣化して充電出来なくなったりするとロボットは稼働停止する。  中には、自分の役割を終えたとAIが判断した場合、自ら稼働を停止するロボットもいる。  AIをバックアップして他の筐体に移し替えることも出来るが、AIが同じでも新たな体になると何か前のロボットとは違う、と感じる人は多いらしい。実際、旧式のAIを新型の体にインストールしても、不具合が出る確立が高いのだという。  その為、一旦他の体を与えても「やはり前のとは違う」と思って再度稼働停止させるロボットの主人もいる。  ロボットにも寿命はある。しかしそれは「稼働停止」であり、死ではない。少なくともロボット自身は、そう認識してはいない。  ……そしてここにも一体、稼働停止を迎えようとしているロボットがいた。
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