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澄慧もまた戦に同行し、陣僧として傷病者の治療と、死者の供養に従事していたが、頃合いを見て、是豪から城へ戻るよう指示された。
是豪の正室・常盤の方の出産が間近に迫っていたからである。
常盤の方は、これまでの出産は安産で四人の男子をもうけている。しかし、此度の懐妊は居成りが悪くたびたび逆子となり、出産を危惧されていた。
城に出入りの医者は山岡芸庵であるが、この時代、女人の出産に関しては子を取り上げる産婆が差配して行われるものであった。しかし、是豪は、「薬師如来の子」とて家中で崇敬を受ける澄慧が近くにおるならば、常盤の方も安堵して出産に臨めようという配慮で、己が陣を引き払う前にひと足早く、澄慧に城へ戻るよう指示したのであった。
澄慧が城へ戻り、帰城の挨拶に出向いた際、大儀そうに大きな腹で座っている兄の妻の様子と顔色があまり優れないことに危惧を覚えた。そして、その二日後、産気づいた。
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