大人だってな、

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大人だってな、

「県主催で交流試合が行われることになった」 甲子園中止の発表から2週間後のミーティングで監督から発表された。その日は珍しくフルメンバーがミーティングに出席していた。 「交流試合ってなんですか?」 副将がざわつく中質問した。 「要は夏の県予選と同じ位置付けらしい。甲子園はなくなったけど、その手前までを県は用意してくれた」 監督の言葉に理解できず、私たちはきょとんとしたままだ。 「大人だってな、甲子園楽しみにしてたんだよ。だから、できる範囲でやろうってことだ」 確かに、未知のウィルスのせいで、私たちの目標は消えてしまった。消えたものは取り戻せない。 でも大人たちは嘆くだけでな無かった。どうにか出来ることをしようとしてここまで用意してくれた。 「ありがとうございます!」 主将が立ち上がって、監督に頭を下げた。主将に続くように、全員が立ち上がり頭を下げた。中には涙を堪えている人もいた。 「おし、みんな、優勝目指して、再スタートだ!」 主将の掛け声で、チームは再び団結した。 久しぶりの全体練習には力が入った。これまで通りとはいかないまでも、近い状態で練習をした。当然マネージャーも同じだ。 目指すは県優勝。 それは未知のウィルス発生前と変わらなかった。
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