4人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
第一試合
結果から言えば、その年の県大会はベスト4だった。
前の年と変わらぬ結果に落ち込むことはあっても、最後まで戦い抜くことが出来た喜びを今でも私は忘れていなかった。
それから、大学に入学して、そこでも野球部のマネージャーをした。
同期のほとんどが、不完全燃焼と言わんばかりに、大学の野球部かサークル、草野球のチームに入った。
しかし主将はどれにも入らなかった。
主将曰く、完全燃焼した、らしい。1年遅れて、スポーツ医療関係が学べる大学に進学し、これからはサポートする側になりたいと皆に報告した。
そして、今、私はテレビの前に座っている。
スマホにはたくさんメッセージが来ている。どれも野球部の同期だ。みんなもどうやらテレビの前にいるみたい。
「ねーちゃん、仕事は?」
大学生になった弟は、眠そうな顔でリビングに来た。大学生活を満喫しているようで、フットサルサークルに、バイト、授業と忙しく過ごしている。
「有給休暇取った」
「大人のくせにサボりかよ」
「今日だけ、今日だけなのよ」
開会式が始まった。高校球児が入場してくる。
そこに、よく知っている高校名が書かれているプラカードを持って生徒が入場してきた。
「お、ねーちゃんの高校、甲子園出てるの?」
「そうよ。それに今日は第一試合に出るの」
「まじか、すごいな」
感心しきりの弟は牛乳入れたコップを持ちながらテレビの前に来た。そしてそのまま一緒に開会式を見る。
「このあと第一試合かー。緊張すんな」
「当たり前じゃない。あーもー緊張する!」
試合開始前に出場校の紹介がされた。見慣れた校舎とグラウンド。監督は変わってしまったけど、練習風景は変わらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!