2人が本棚に入れています
本棚に追加
Prologue
満月が壮麗な夜に燃え盛る炎は大きな屋敷を包み込んでいた。轟々と激しい音を立て、近づく者をまるで威嚇しているかのようだ。
屋敷の前を通る道路に立ち、泣き叫びながら声を上げる少年が一人。必死に屋敷へと向かおうとしているが、大勢の大人たちがそれを阻んだ。少年の体を押さえ、必死に宥めようとしているが、少年は咆哮し、抵抗し、暴れ続ける。しかし、脆弱な少年の力では大勢の大人の力には到底敵わない。伸ばされた手は意味のない虚空をただ掴むばかりだった。
スカイブルーの瞳に映るのはメラメラと燃える、痛い程の暴力的な赤色。少年はとめどなく涙を溢れさせながら、消防隊の鎮火活動を茫然として眺めていた。
そして、ようやく無気力にも諦めたようにその場に崩れ落ちると、震える拳を強く握りしめ、僅かに涙で濡れたアスファルトへと叩きつけた。血が滲むのもお構い無しに少年は誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。
「絶対に、許さない」
その囁きは…。
最初のコメントを投稿しよう!