63人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
4
〇二階堂 海
「学校、続けるんだってな。」
俺の問いかけに。
「…学校側がしつこいからさ…」
紅美は、頭の後ろで手を組んで言った。
出席日数が足りなくて、留年決定。
学校側からの「ぜひ卒業してくれ!」という強い希望もあって。
勉強好きの紅美は、あっさりとそれを受けた。
二週間前、沙都が迎えに行って、紅美は…帰って来た。
そして久世君は…故郷に帰って行った。
沙都が陸兄に話した様子では、紅美は今まで見たこともないくらい取り乱して。
久世君に置いていかれたことを悲しんだそうだ。
「空ちゃん、治るかな。」
紅美が、二階の空の部屋の窓を見上げてつぶやいた。
空は、事故で記憶喪失になっている。
「…治るさ。」
つぼみの桜が、風で揺れる。
「そういえば…」
「ん?」
「海君…体育持ち上がり?」
紅美が、前髪をかきあげながら言った。
「ああ。あ、そうか。おまえの学年か。」
花壇のチューリップが、紅美の後ろで揺れた。
「ビシバシやるからな?」
俺がそう言うと、紅美は目を細めて。
「ブルマーになれとか言うのはやめてね。」
って、花壇の前にしゃがみ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!