64人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫か?」
廊下を歩いてると、カバンを持ったチョコちゃんに遭遇。
顔色をうかがうと、カバンを抱き抱えて。
「はっははい。」
顔を隠した。
チョコちゃんは今日、体育の持久走の最中に倒れた。
「今度から無理しないように。調子悪いなら、すぐ言ってくれよ?」
「は…はい…」
「それとも、俺は言いにくいか?」
「いっいいえ、そんな…」
…可愛い。
空と泉とは違ったところで…可愛い。
俺とチョコちゃんが話してると。
「うっみくー…あ。」
紅美が走ってやって来て。
「小田切先生~…」
俺に隠れて見えなかったらしいチョコちゃんを発見して、慌てて名前を言い換えた。
「…何。」
「はい、日誌。」
「ああ…日直か。」
俺はパラパラと日誌をめくって。
「…書き直し。」
紅美に返す。
「えっ、何で。」
「ロッカーのチェックなんてしてないだろ。見ずに〇なんてするな。」
「げっ、バレたか。」
「あと、ここ。サインじゃなくて、ちゃんと名前を書く事。」
「いいじゃん。価値出るかもしれないよ?」
「……」
頭を抱える。
紅美は俺の手から日誌を取ると。
「あ~、やだね~。細かすぎる独身男って。」
って、チョコちゃんの肩に手をかけた。
「俺のことか?」
「いいえ、べっつに。じゃ、ロッカーのチェックでもするかな。」
紅美はそう言って、教室の方に歩いて行った。
「……」
紅美の後ろ姿を眺めて、溜息。
…そばにいてやりたい。
そう思う反面、担任となってしまった今、一人の生徒に固執するのが難しくなった。
あれだけ一緒にいた沙都は、学年が一緒になったにも関わらず、紅美のそばにいるのを見かけたこともない。
沙也伽は卒業したし…
「あたし…帰ります。」
「あ、ああ。気を付けて帰れよ。」
「はい。」
チョコちゃんの背中を見送って。
「…よし。プリント作るか。」
潜入捜査が終わった事で、教師に没頭できる俺がいる。
それは…
二階堂から少し離れて、客観的に自分を見つめる事の出来る時間でもあった。
最初のコメントを投稿しよう!