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「おい。」  バッ。 「…見つかったか。」  別に監視してるわけじゃないが…  紅美を目で追ってしまうクセがついた。  どうも姿が見えないと思って保健室に行くと…いた。 「ったく。おまえなあ…」  布団をはぎ取って、紅美を見下ろす。 「また留年するつもりか?」  目を細めて、言うと。 「仮病じゃないもん。」  布団を奪い返した紅美は、俺に背中を向けた。 「風邪か?」 「生理痛。」 「……」  まったく…  生理痛と言えば俺がひるむとでも思ってるのか? 「薬飲んだか?」  椅子に座る。 「これぐらいで飲まないよ。」 「その程度なら授業受けれるんじゃないのか?」 「男子には分からない痛みなので。」 「まあ、そうだけど…おまえ、何か悩んでんのか?」  紅美の頭をガシッと掴む。 「こっち向け。」  ぐぐい。と、頭の向きを変えさせようとした。 「いたっ…何よ…別に悩んでないよ。」 「でも、おまえって悩みがあると保健室で寝てるじゃないか。」  図星だったのか、紅美は体を硬直させた。 「…悩みってほどじゃないよ。」 「小さくてもいいから、言え。」 「……」 「沙都(さと)の事か?」 「…わかんない。」 「わかんない?」 「……」  せっかく戻って来たのに、紅美と沙都は避け合ってるように見える。  俺としては…前みたいに沙都が紅美にベッタリでいてくれた方が…  …あきらめもつくのに。  こうやって紅美を一人にされると…フツフツと…俺の中で抑えていた願望が芽を出してしまう。  …紅美が好きだ。  誰にも言えない想いが、時々窮屈そうに顔を出す。 「…紅美。」  小さく声をかけると、紅美は目を閉じたまま。  …寝てるのか? 「……」  優しく頭を撫でる。  それでも紅美は起きない。 「……」  顔を近付けて…そっと唇に触れた。 「……」  ああ…何やってんだ俺。  悪い……沙都。
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