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〇二階堂紅美
「そ…それで?」
『ヘヴン』で知り合った女の子達、マキちゃんとナナちゃん。
偶然、事務所の近くでマキちゃんに遭遇して以来、あたし達はたまにナナちゃんが開いた雑貨店で落ち合って、食事に出かけたりするようになった。
「うん…告白…されちゃった。」
マキちゃんの手には、キラキラと光る…
「指輪!?告白って、プロポーズ!?」
あたしとナナちゃんと、今日はあの店の一番人気だったミカちゃんもいる。
あたし達は、マキちゃんの手を見て目を輝かせて。
「おめでとう!!やったね〜!!」
手を取り合って、喜んだ。
マキちゃんは、英会話教室で知り合ったアメリカ人と意気投合。
恋人なのか友達なのか分からない期間を経て…晴れて婚約中の身となった。
「そういうナナこそ、店に通ってたお客さんから告白されたんでしょ?」
「えっ、マジで?」
「うーん。あの頃のあたしを知ってる人はどうかなって思ったんだけど、むしろ隠さなくていいから楽かなって。」
「なるほど…ミカちゃんは?」
「あたしはしばらく男はいいわ。今、下着のデザインしてるんだけど、これがなかなか好調でね。」
「自分でモデルもできるし、ミカは営業の才能もあるから、絶対成功するわよ!!」
…楽しい。
こうしてると、あのお店が無くなったなんて、嘘みたいに思える。
…慎太郎…元気かな…
「あ、そう言えば紅美ちゃん、沙都坊元気?」
「沙都坊…ふふっ。うん。元気だよ。」
「可愛い子よね〜。あのルックスで、僕って言うのがまたたまんない!」
「あはは…」
しばらく、マキちゃん達は沙都の話で盛り上がった。
沙都も同じバンドなんだと伝えると、三人は手を握り合って喜んで。
「絶対ファンクラブに入る!!」
って。
「ファンクラブなんてないよ。」
そう言いながら笑った。
「あ…でもさあ…」
ミカちゃんが何かを思い出したように、顎に人差し指を立てた。
「何?」
「確か…沙都坊より先に、紅美ちゃんを探しに来た人がいたのよね。」
「…え?」
あたしはキョトンとして、ミカちゃんを見る。
「えーっ、何それ。」
マキちゃんとナナちゃんも、知らなかったようだ。
「ルミが言ってたもの。慎太郎が、沙都坊にうちの店を教えるよう、他の店の子に頼んだって。」
「…どうしてそんな事を?」
「沙都坊の捜索力じゃ、無理だって思ったんじゃないかな。どうもその人、沙都坊に早く紅美ちゃんを見付けさせたかったらしくって。」
「……」
あたし達、顔を見合わせる。
「ルミは、軽く慎太郎のストーカーでもあったじゃない?だから、休みの日も店に行って…見ちゃったらしいの。」
「何を?」
「だから、沙都坊より先に、紅美ちゃんを探しに来た人の事。」
「……」
あまりにも思いがけない言葉だったせいで、あたしの頭の中は真っ白になっていた。
…誰?
沙都より先に…沙都よりももっと、あたしを探してくれてた人って…
「なかなかの男だったらしいわよ。」
「そんなんじゃわかんないわよねぇ!!紅美ちゃん、誰か心当たりあるの?」
「う…ううん。分からない…」
「えーと…ルミがセクシーだって言ってたのよ…ああ、そう。ここにほくろがあったって。」
ミカちゃんの指は、左の目元。
「……」
あんな小さなほくろ、セクシーって言われるとか…
他に魅力ないって言われてるみたいなもんだよね…
つい、小さく笑ってしまった。
「何、紅美ちゃん。分かった?」
マキちゃんの問いかけに。
「…うん。」
たぶん、あたしは優しい顔をしたと思う。
…そっか…
探してくれてたんだ…
………嬉しいや。
…すごく。
すごく。
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