アディショナルタイム

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 あーあ……終わったぁ!  背中を丸めて机に齧り付く、夏服の白シャツの群れを眺めながら、シャーペンを置いて伸びをする。教室の窓側の最後尾。後ろに迷惑をかけないから、思い切り伸びをする。弾みで大きく欠伸をしたら、担任の「ネズミちゃん」こと根津美智也(ねづみちや)先生と目が合った。  まずい、まずい。ここは、ちゃんと真剣にやってますアピールだ。ニコッと笑ってみせるも、ネズミちゃんはノーリアクション。痩せ型の高身長なんだから、もう少し愛想があれば、女子受けもいいだろうに。  あたしは、クラスメイトに倣って、机に覆い被さると、解答を見直してみる。全5問。点数配分は、単純に1問20点かな。ネズミちゃんは、余り細かく配分しない。見直しは、あっという間に終わる。今回は、ヤマが当たった。昨夜詰め込んだ公式が、まんま出題されている。  それにしても、あたしは決して成績上位者じゃない。なのに、あたしより賢い筈の(あや)ちゃんも、学年10位以内常連の水上(みずかみ)君も、まだ真剣な顔して戦いの最中(さなか)だ。  ふふふっ。あたしってば、急に学力向上しちゃった訳?
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