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「遂にできたぞ! これを冷凍保存しておいた被検体に細胞移植すれば……」
保存用のポッドには男の妻の姿があった。
(この研究が認められれば、研究者として名を上げ、莫大な研究費を獲得することができるだろう)
男には、そんな厭らしい目算があったが、やはり一番の目的は、若かりし頃に失った妻を蘇生させることだった。
――それから数ヶ月が経った、ある日。
研究室にある所々、穴が開いてしまっているソファで仮眠を取っている男の隣の部屋で、細胞移植を受けた妻がひっそりと息を吹き返していた。
(ん?)
彼女は酷く重い頭を押さえながら、状況も理解できないまま部屋を抜け出す。
清潔で無機質な廊下を直進し、行き止まりになると勘を頼りに左右どちらかに折れ、出口を探し続けた。
走り続けて数十分経っただろうか、彼女はやっと研究所の出口へと辿り着くことができた。
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