爆ぜた日常

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爆ぜた日常

神の都、ひかみ。漢字にすると、日守。神は社に根差し、人は社と神を守り、神は人と世界を守った。 神社では子供たちの笑い声と共に、かつん、からんと何かが落ちてぶつかる音がしていた。今度こそはと意気込む声もあり、彼にとってはただの遊びではないようだ。 特徴的な白い制服を着た神兵が二人、賑やかな神社の前の道を進んでいた。 神社の中に入ると、遊ぶのはともかく、参道の真ん中を陣取っていないだろうね? と長い茶髪の神兵が目を配る。 子供たちは熱中するあまり神兵が入ってきたことにも気付いていない。茶髪の神兵は数歩進み、背後から声を飛ばす。 「こら!そこの坊やたち!不敬罪で捕まえるわよ!」 神兵に見つかった子供たちは、ごめんなさいと言ってその場から走り去った。子供たちは鳥居に石を投げて乗せようとしているところだった。 「鳥居に傷がいったらどうするのよ……」 幸い、石は鳥居に届かなかったらしい。時計 すいれん(とはかり すいれん)はしゃがみ、神の通る道から小石を除ける。神兵の仕事は、神を信じない者や無礼を働く者を罰することである。 「最近は子供もああなってきて大変ですよね。これもあいつらのせいでしょうか……」 すいれんの後輩であるりんどうが困った様子で言う。いつも帽子を深くかぶり顔に影をさしているすいれんが言うと、余計に深刻そうに聞こえる。 あいつらと言うのは、神は人を救わないと言って社を壊したり、神兵、そして神も襲う人生論者たちのことである。二人は実際に対峙したことはないが、神兵たちは手を焼かされていた。 りんどうは何気なく社の水時計を見た。 「あっ先輩、もう時間ですね」 そう言われて、すいれんはりんどうと一緒に本部へ帰る。すいれんは帰り道に頭の中で今日の報告書を書き始めていた。 「時計 すいれん、ただいま帰還しました!」 「松無私 りんどう(まつむし りんどう)、ただいま帰還しました!」 部屋に入り帰還したことを知らせるとすぐ、神棚に歩み寄る。一礼、そして無事に帰れたことを心の中で神に感謝する。 「今日の巡回はどうだった?」 班長である海老根 えんれいは書類を書くのを一旦止めて聞いた。 「はい、大きな事件などはありませんでした。ですが、鳥居に石を投げる子供がいました」 「そうか、時計は報告書を書いてくれ。松無私は裏の警備を……まだ言い終わってないぞ」 りんどうは用件はもうわかったとばかりに部屋を出る。自分への指示が始まったころから足を出口へ向けていたのか、海老根の向けた視線も扉に遮られてしまった。 仕事には真面目に取り組み、次の行動に移るのが早いのはいいことだが、時々聞く耳を持たないことがある。 足が速いから、今追いかけてもどこにいるのかわからないだろう。 元は真面目だから伝えれば直してくれるだろう。すいれんは、人の話は最後まで聞くように言っておこうと思った。 そして報告書を書こうと自分の机の前に腰を下ろしつつ、ペンに手を伸ばした時だ。体の芯まで伝わる振動と共に、膨れ上がるような爆発音が聞こえた。 なんだ?とわからないままに音のした方を向く。 「急げ!裏の方だ!」 廊下からは現場へ急ぐ神兵たちの足音がする。 裏は確かりんどうが行くはずだ。もしかしたら、爆発に巻き込まれているかもしれない。
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