序章

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序章

国風文化の風が吹き荒れ貴族たちが我が世の春を謳歌する平安の世。この世においてこれを嘲笑う男がいた。 この男の名は西京院万象…… 京の都にてヤミ陰陽師をしている最強の陰陽師である。 元々は遣唐使であったのだが、菅原道真公の進言から遣唐使が廃止された事により、遥か遠くの唐の国は長安の都にて風来坊となってしまった。これをよしとした万象は世界を旅して回る事にした。 旅を終え、旅先の森羅万象(ありとあらゆる)術を修めた万象は、日本は京の都に舞い降り、ヤミ陰陽師として日々、莫迦梵梵(バカボンボン)の貴族や京の都に災いを成す悪鬼悪霊相手にその力を振るうのであった。 話変わって、桜の薫風芳しい京の都に激震が走っていた。 関白、藤原通宝(ふじわらの みちたから)が酒の飲みすぎから来る飲水病(糖尿病)の悪化で鬼籍に入ったのである。関白と言えば御華門の補佐をして(まつりごと)を司る重職。そのようなお方が亡くなったとなれば政治的空位が生まれてしまう。直様に後任の関白職が望まれるのであった。 通宝の次は年齢順として、弟の藤原満矩(ふじわらの みちるかね)が関白職に選ばれたのだが、鬼籍に入ってしまった……  実に、関白就任より七日と言う短い期間のことであった。
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