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語尾が少し震えた。ずっと心の中にあった言葉なのに、いざ口に出すと、拒絶されるのが怖くなってしまう。
「いいのか」
聞こえてきたのは、意外にも戸惑った声だった。
「オレなんかの番になって、本当にいいのか。オレは裏社会でしか生きられない人間だ。もしもの時には、一緒に殺される可能性だってあるんだぞ」
「かまわない」
即答した。
刃物を愛した異常者は、刃物に殺されても後悔などしないだろう。おれも同じだ。悪に惹かれてしまった以上、悪に身を滅ぼされて死んだってかまわない。青柳のそばにいられるのなら。
「そっちこそ、本当にいいのかよ。番になっちまったら、ほかのオメガと遊べなくなるぜ。これでもおれ、けっこう嫉妬深いんだから」
「ふん。ほかのオメガなんて、おまえの代用品にもならねえよ。『ラ・オメガ』を閉めるなら、新人教育の必要もなくなるしな」
くくっと口角を吊り上げて笑う。凶悪に笑いながら優しい目ができる男なんて、きっと青柳くらいのものだろう。
「オレはしつこいぜ。喧嘩も、拷問も、人を愛することだって、やるとなったら徹底的にやらなきゃ気が済まねえ。ちょっとやそっとじゃ逃がしてやらないぜ。覚悟できてんのか?」
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