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罠の材料は、熟したバナナと焼酎、ドライイーストを混ぜたもの。
それらを容器に入れ、夜のうちに木の根元に置いておく。そうすると、匂いにつられてカブトムシがやってくる。
「これ、『バナナトラップ』って言うんだってさ」
焼酎やドライイーストを混ぜるのは、発酵をうながすためだ。カブトムシは夜行性で、嗅覚が発達している。果物の濃厚な匂いが、甘いものが大好物なカブトムシを引き寄せたのだ。
「あっちゃん、物知りだね!」
きらきらした瞳でそう言ったのは、篤志の幼なじみ、甘野 歩夢(あまの あゆむ)だ。
ふわふわの栗色の髪。
ぱっちりした瞳。
ふんわりした笑顔。
のちにオメガであることが判明する彼は、少女と見紛うほどのかわいらしい容姿をしていた。性格はおっとりしていて優しい。篤志は尊敬と同時に威圧感をいだかせることが多いが、歩夢は正反対。どんな人でもリラックスさせてしまう雰囲気を持っていた。
15才になると『性質検査』が行われ、アルファ・ベータ・オメガといった性質が判明する。まだ自分の性質を知らない二人だが、8才にして、徐々にアルファ・オメガである特徴を垣間見せ始めていた。
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