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昼休み終了まであと5分
「なぁ、あと5分…」
冴島隼人はそう言うと、隣で身を固くしてはいるが何をされてもいいとばかりにうっとりして彼を見つめる風間花笑の体を右手で抱き寄せる。
視聴覚室の半分開けられた扉の向こう側。
ふと、隼人の視線が廊下に立つ私に向けられる。
私から目を離さず、彼はハナにキスをした。
私に、見せつけるように。
体が熱くなるのを感じる。
悔しいのに、腹が立つのに、目が離せないのは何故だろう…空いた右手を握りしめる。
2人は私、守谷祐子の幼馴染で親友だ。
そして、隼人は私に好きだと言った。…はずなのに。
なお、ハナにキスを重ねる隼人。
私を「好き」だと言った、その同じ唇で。
吐き気がするそう思った。
アイツは、私が見ているのを知っている。
知っていながら、見せつけるようにしてキスを重ねる。
そのいやらしい匂いに飲み込まれそうな気がして思わず後ずさる。
…そしてそのまま、教室へと踵を返した。
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