6.疑惑

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「万知ちゃん帰っちゃったなぁ」  翔太はグラスに残るビールを飲み干すと、ウィスキーのロックを貫治に頼んだ。 「翔太、これで止めなよ」  空腹にアルコールはよくないと、貫治が二杯目の生ビールと一緒に出したピラフの皿は、とっくに空っぽだった。 「万知ちゃん万知ちゃんって、お前本当に万知ちゃんが好きなんだね」 「おう。万知ちゃんは俺の憧れだからな」  ロックと一緒に出されたもろきゅうを楊枝で刺すと、翔太は口に放りこんだ。 「そんなに好きなら、兄貴とつき合う前に告白すればよかったのに」 「いいんだよ。万知ちゃんが幸せなら、それでいいんだ」 「本当にそう思ってるの」 「うん。長く憧れすぎて、万知ちゃんへの気持ちが麻痺してるのかもな」  グラスの中で溶ける氷が重なる音がかすかにした。翔太が貫治を見上げると、貫治は顔を強張らせて微笑んでいた。
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