7.確信

8/24
前へ
/92ページ
次へ
 開くとすぐにタイムラインが表示された。この間フォローしたおしゃれなカフェの投稿をスクロールしていく。おいしそうなケーキとキーマカレーを見て、いつか陽治とふたりで行けたらいいと思い、フォローしたお店だった。一緒に行こうなど言えるわけもなく、万知は投稿されている写真を見て、その向こう側に思いを馳せた。  さらに下へとスクロールしたあと、新規投稿の文字が画面の上に現れた。下へとスクロールしていた指を今度は上へと動かした。出てきたのは、シアンの写真だった。  相変わらずシアンはかわいい。前足で顔を擦る写真と、タオルケットに体を埋める写真を見て、万知は目を細めた。シアンの写真を見ているだけで、陽治のことで緊張した心も体も解れていくように感じた。  万知は薫のホーム画面を開くと、たくさんのシアンの写真を見ながら、名案を思いついた。今から実家に遊びに行って、リアルシアンに癒されてくるというものだ。  ただし、薫がいなかったらという条件付きだ。嫁いで出て行った義姉が遊びにくるというのは、薫にとってストレスだろう。陽治の事務所で仕事も頑張ってくれているようだし、休みの日はゆっくりしたいだろう。薫が苦手というのもあるが、薫を慮ってこその老婆心からだった。  さっそく母に電話しようと、スマートフォンを手にしてとある写真が目に入った。画面はまだ、薫のホーム画面を表示していた。  日付を見ると、一か月前に投稿されていた。おしゃれなレストランの食事の写真だ。そこに映るぼやけた指先に、見覚えがあった。  雅知の指は、武骨で爪も四角い形をしている。写真に映る指先は、細くて爪もきれいな卵形をしていた。丁寧に爪をカットし、手入れの行き届いた指はしわも少ない。  手荒れしやすい陽治は、ささくれを嫌い、まめにハンドクリームをつけていた。伸びた爪がキーボードに当たる音が不快だと、爪をカットしたあとヤスリをかける徹底ぶりだ。万知は、陽治の指が好きだった。  だからこそ、ぼやけていても分かる。  薫の写真に映る指は、陽治のものに違いなかった。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1307人が本棚に入れています
本棚に追加