7.確信

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 揺らめく光が、視界いっぱいに広がっていく。  自分が望むことは、なんだろう。ただ、夜はゆっくり眠りたいだけだ。できるなら、陽治に抱きしめられて。 「今夜も早く帰らないとまずい?」  探るような翔太の声で、万知は我に返った。揺らめく光はまたたく間に消え去り、機嫌を伺うように上目で見る翔太の顔が目の前にあった。 「今夜は大丈夫」  今ごろ陽治は薫と会っている。万知の中に2人が重なる絵面が浮かんだ。もうどうでもいい、万知は投げやりな気持ちで、妬みを割くように水ようかんを口に入れた。 「貫治のとこに行こうよ。二人で行ったら驚くだろうな」  万が一、陽治が本当に残業で、帰ってきて万知がいなかったら、慌てふためくだろうか。心配になって探してくれるだろうか。 「うん。驚かせよう」  心配すればいい。  万知がいなくて、事故じゃないかとか、浮気じゃないかとか、悶々とあり得ないことを考えて、心配してほしい。  香り高いほうじ茶を飲み干し、二人は店をあとにした。 「あのさ」  貫治の店まで、歩いて十五分ぐらいらしく、歩いていくことにした。昼間よりも湿っぽい風が、万知と翔太の間を吹き抜けていった。 「雅知もそうなんだけど、保谷姉弟は我慢しがちなんだよね」  電気の消えたオフィスビルの間を歩きながら、翔太が呟いた。 「人間、多少は我慢が必要だけど、極度に我慢する必要はないんだよ」  翔太は何かを知っているのだろうか。それとも、他人の目には、万知はそんなに我慢しているように映るのだろうか。 「翔太くんは優しいね。ありがとう、私は大丈夫」  万知の頭に雅知の顔が浮かんだ。雅知が陽治と薫の浮気を知ったら、万知以上に傷つきダメージが大きいかもしれない。 「雅知をよろしくね」  うまく笑えてなかったのかもしれない。翔太は訝しげに万知を見ると、何も言わずに前を見据えた。
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