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貫治の店は、いつもよりも混んでいるように見えた。アルバイトの端整な顔立ちの男の子が、万知と翔太を見ると笑顔でカウンターに案内した。万知がたまに店に立ち寄るとき、帰るころにやってくる子だ。
肌はすべすべで、性別を感じさせない美しい男の子だった。
「こんばんは、翔太さん」
「宗一くん忙しそうだね」
翔太に肩を叩かれはにかむと、宗一は少し離れたところにいる貫治を呼びにいった。
「きれいな子よね」
横目で宗一の背中を追いながら、万知は口元に手をやると声を潜めた。
「貫治くんの恋人かしら」
翔太は乾いた笑い声を上げると、万知を誘導するように、空いていたカウンター席の背に手を添えた。
「違うよ。あいつは」
椅子に腰かけた万知に視線をやって、何か言いかけていた口を閉ざし、翔太は横の椅子に座った。
あいつはの続きが聞けるのかと、万知は翔太の顔を見上げたが、それ以上、翔太は何も言わなかった。
「こんばんは」
忙しいのだろう、少し疲れたような顔をした貫治が、万知と翔太の前に生ビールのグラスを置いた。
「何食べてきたの?」
「前に話した小料理屋行ってきたんだよ」
「おいしかった? 万知ちゃん」
「とっても。今度は貫治くんも一緒に行こう」
貫治の「おいしかった?」に、「兄貴は大丈夫なの?」ということばが隠れているような気がしたのは、後ろめたさを拭えないからかもしれない。
万知はグラスを手にすると、勢いよくビールを喉に流し込んだ。
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