7.確信

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 貫治が出したオリーブの塩漬けをかじりながら、グラスの中で琥珀色の液体を揺らす小さな泡を見つめた。この塩漬けは貫治が作ったもので、オリーブや岩塩にこだわっていると、前に聞いたことがあった。 「万知ちゃん」  不意に声をかけられて顔を上げると、眉をひそめた貫治が立っていた。トイレだろうか、翔太はとなりにいなかった。翔太がトイレに立ったことに、気づかなかった自分に驚いたが、それ以上に、心配そうな貫治の顔が万知の心を揺らした。 「翔太と出かけてるの、兄貴は知ってるの?」  知っているわけがない。でも、正直に話すことも嘘をつくこともできずに、万知は口ごもった。 「電話がきてるかもしれないよ。確認してみた?」  もしも、心配した陽治から連絡がきたら、急いで帰ろうと思う。でも、もしも。もしも、何も連絡がきていなかったら? そちらの方が可能性が高い。陽治は今、薫といるのだろうから。  俯く万知に目線を合わせて、貫治が膝を折った。 「あとで俺が送っていくから、一緒に帰ろう」  貫治は、陽治の浮気を知っているのかもしれない。そんな穿った思いが、万知の中に浮かんだがすぐ消えた。知っていたところで、貫治に何かできるわけではないし、嫌な気持ちにさせて迷惑をかけるだけだ。 「ありがとう。でも、大丈夫よ。一人で帰れるから」  貫治が奥の席の客に呼ばれた。 「ごめんね」  万知の小さな声が届いたのか、心配そうな顔のまま、貫治は客のほうへと向かった。
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