7.確信

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 死角がないよう、マンション内の共有部分には、隅のほうにも光が当たるように設計されている。ひっそりと静まりかえった明るいエントランスでエレベーターを待ちながら、意を決して万知はスマートフォンをバッグから出した。  着信もメッセージもないのは当たり前だ。陽治から連絡がきているわけがない。もしきているとしたら、今夜も遅くなるというメッセージだろう。いつものことだ。  翔太との楽しかった会話を思い出して、よしと小さく呟いて万知はスリープを解除した。明るさを取り戻した画面を見て、大きな声を上げそうになり、片手で口を覆った。  通知画面には、たくさんの着信とたくさんのメッセージが残っていた。ダイレクトメールを除き、すべて陽治からだった。  ――万知、出かけたの?  ――万知、どこにいるの?  ――誰と出かけてるの?  ――なぜ電話に出ないの?  ――これ見たら、電話して。  ――今すぐ帰ってきて。  ――万知、心配だよ。早く帰ってきて。  陽治は万知を心配してくれていた。メッセージの画面は、優しいことばであふれている。熱く潤む万知の瞳には、そう映った。  早く帰ればよかった。万知の胸は、罪悪感で切なく締めつけられた。ふと期待に似た感情がわき上がる。  もしかしたら、薫の写真はたまたまなのかもしれない。きっと、陽治の浮気相手は薫ではない。そもそも、浮気していると万知が感じているだけで、本当は陽治は浮気なんてしていない。万知の嫉妬心が、万知の心を疑心暗鬼にさせて、そう思い込ませているのだ。  今も、万知はちゃんと陽治に愛されている。  エレベーターの速度が遅く、もどかしかった。早く会いたい。きちんと謝りたい。  開いたエレベーターから飛び降りると、万知は部屋へと急いだ。
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