5分黙り続けたら100万円

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5分黙り続けたら100万円

 僕は部屋に入れられた。  目の前の老人がにっこり笑いながら言う。 「5分黙り続けるだけで、100万円です。 たったの5分ですよ」  本当に僕は運がいい。  昨日、電柱に貼ってあった『簡単に100万円がもらえる』というチラシが目に入って、本当に良かった。  僕にはお金がない。  稼いだお金はギャンブルで簡単に消えてしまう。  だから、絶対に100万円が欲しい。  僕は部屋を見回してみた。  薄暗い部屋。    コンクリートの壁と扉があるだけだ。窓すらない。  そしていつの間に移動したのか?扉の向こうから老人の声が聞こえた。 「5分たったら、終わりだと言いますから。 頑張ってくださいね。では、スタートです」  体感10秒、物音1つしなかった。  なんだ余裕じゃないか。  と思ったその時だった。  突然、目の前の壁がパッと光り、ゾンビの顔が映し出された。  ?!  それはあまりにも唐突な事で、僕は声を出しそうになる。  ふぅ、危ない。こんな簡単なことで失格にはなりたくはない。  それから、ゾンビの画像をじっと観ていると、急に映し出されたゾンビが動き出した。  ……これもの1つか。  しかしまぁ、こんなものでびびって声を出すと思われているのが、笑けてくる。  僕は怖いものは得意な方なのだ。  そして高を括って、にやりとわら……  ばっしゃぁあん  いきなり大量の水が頭上から降ってきた。  あまりの冷たさと衝撃で、声が喉まで出かかる。   さすがに水はやめろよ。風邪をひくだろう。風邪をひいたらギャンブルが出来ない……  僕は文句を言いたい気持ちを抑える。  そして、とりあえず冷静になって考えた。    一体どうやって水が落ちてきたのだ?  確かめようと、僕は上を向いた。  その時だった。    『何か』が落ちてきて、    びちょ  と顔面に入りついた。  なんだ?気持ちが悪い。  僕は必死にその『何か』を引き剥がした。  その『何か』はネチョネチョしていて、僕を余計に焦らせた。  まさか……  僕は覚悟を決めて、やっと取れた手の中の『何か』を見た。  僕は『何か』を見た瞬間、反射的に、それを壁に投げつけた。    その『何か』はゲコっと鳴いた。  大きな蛙だった。  怖気が襲い、身震いをする。  勘弁してくれ。僕は蛙が苦手なのだ。    僕はため息をついた。もう疲れたよ。いっそのこと、老人が来るまで寝てしまおう。  僕は床に寝そべった。  その時、ピーっとモスキー音が鳴り、僕は強制的に起こされる。  なんだよ……寝かせろよ。  『緊急です。ご友人のタナカさんがたった今、バイクで交通事故に合われました。瀕死の状態です』  頭上から女の人の声がした。  タナカ……?あぁ僕の唯一の友達だ。    交通事故に合ったのか?  それは大変だ。  彼は僕の大切な友達だ。  こんなもの、さっさとやめて、早く行かなければ。  そして僕は老人を呼ぼうと口を開こうとした。  ん?でも待てよ。タナカはバイクには乗らないはずだぞ。  ……罠か。  危うく騙されそうになった自分を呪う。  侮りすぎていた。100万円の為に意識を高く持たなければ。    それはそうと、5分ってこんなに長いものだっけ?  もう30分くらい経っている気がするぞ。    と思ったとき、  ガチャン  と扉が開かれた。  そして老人が拍手をしながら部屋に入ってきた。  やっと終わった……僕は安堵した。  老人は言う。   「もういいですよ」    僕は喜々として勢い良く言った。 「さぁ、早く100万円をください!」  すると、老人は楽しそうに大笑いをした。  そして、言った。    「残念でしたね。まだ4分59秒ですよ」  
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