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「っ、見つけた!」
「へ?こ、こら颯斗!どこに行くんだ!」
人混みの中、頭半分飛び抜けた長身痩躯に、一際煌めくオーラを纏う男が目に飛び込んでくる。
急激に甘さを増した香りの発生源に向かって、僕はまだ短い足を全力で動かして駆け寄った。
「つかまえたっ」
「うわっ、な、んだい君は。どこのお家の子?」
近くの男の人と話をしていた彼は、突然自分の足にしがみついてきた小さな僕に目を丸くした。
けれど僕は興奮のあまり、彼の問いかけに答えることもできず、一息に言い放った。
「はじめまして、結婚して下さい!」
「……はぁ?」
唐突に告げた僕に、彼は一瞬の無言の後、思い切り怪訝そうに鼻白んだ。
「はっ、颯斗!?お前は何をっ。も、申し訳ありません、久遠様」
足早に追いかけてきた父は僕の体を捕まえると、慌てて抱え上げる。
「誠に失礼いたしました」
「いえ、笈川様、幼い子供の言うことですから、お気になさらず」
「ありがとうございます」
丸い顔に汗の粒を浮かべながら謝罪する父に、彼は綺麗な笑みを浮かべて首を振る。
あっさりとなかったことにされそうな気配を察知して、慌てた僕は、目の前の『運命の相手』に向かって必死にアピールした。
「お兄さん、くどうさまって言うの?僕は笈川颯斗、七歳です!結婚してください!僕をくどうにしてください!」
「はははははははやとっ!お前はもう黙りなさい!!」
悲鳴のような声で僕を窘め、黙らせようとする父に穏やかに笑いかけ、彼はさらりと話を変えた。
「はっはっは、笈川様のところのご長男は面白いお子さんですね。お姉様の凛華様はしっかり者でしたが」
「はい、跡取りの長女はしっかり者のアルファでしたが、この子は上の子と八つも離れた子で、私も妻も甘やかしてしまったためか、どうにも奔放な甘えっ子でして。失礼を致しました」
「親に甘えられるのは幸せな子供の証拠ですよ。可愛らしい子じゃないですか」
だらだらと汗を流す父に、彼は肩を竦めてにこやかに、けれど明らかに作り笑いと分かる表情で話しかけた。
彼が完全に僕を無視して、僕を抱いている父にのみ話しかけていることがとても悔しくて、腹が立った。
だから僕は、その綺麗な顔をこちらに向けたくて、大人達の会話に、大きな声でハキハキと割り込んだ。
「オススメ商品です!ぜひお持ち帰りして下さい!」
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