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翌朝、姉は変わり果てた姿で見つかりました。
全身がボコボコに赤く腫れて、まるでクラゲに刺されたような跡が残っていたそうです。特に口元が酷く腫れ上がっており、ぱっと見ただけでは彼女であると判断できないような、酷い姿だったそうです。
まだ小さかった私はその姿を見ていませんので、人づてに聞いたのですが、私は姉にもう会えないという事実だけで十分でした。
周囲は家庭内の問題で姉が自殺したと思っていますが、私はそうは思いませんでした。"あの男"という心当たりがあったからです。しかしそのことを話したところで、誰も真剣に聞いてはくれません。
当然です。小さい子供が言うことですし、自殺の動機も揃っています。不可解な死因を探るのも面倒になったのでしょう。 すぐに姉は自殺したと結論づけられ、話は広まり、しばらくして私たちは家を引っ越すことになりました。
十数年たった今でも、私はあの夏のことが忘れられません。
いえ、実のところ、私は姉が死んだとは思っていないのです。あの海のどこかでまだ、あの男と生きているような気がしてならないのです。
引っ越す直前に立ち寄ったあの岩陰で、カスタードクリームのような色をした美しいクラゲを見たあのときから。それに、馬鹿げた話ではあるのですが、海の中で笑う姉が、何度も夢に出てくるものですから……。
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