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思えばあのときの姉は、まだなにか迷っているようでした。相変わらず笑顔を絶やさない姉ですが、その日の夕飯時はしょっちゅう箸を止めて、想いを馳せている様子でした。陽にあたり続けて疲れたのだろうと母は言いましたが、姉はいつも必ず麦わら帽子を被っているし、最近ではずっと岩陰で涼んでいるのだから、そんなはずはありません。
私はやはり、あの男の呪いなのではないかと思いました。徐々に彼女の精神を蝕んでいく呪いなのではないかと。ですが、姉は明日、海に行く暇もなく帰省する予定です。もうあの男に何をされても今日で最後です。そして今日ももう終わるのです。
私は安心しきっていました。やっと姉と男が離れるのだと精々していました。
だから彼女は死んだのです。
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