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何時か私も、一矢を好いていた女子から恨まれるだろう。その時、あー、大丈夫、ニセなんでっ。(キラーン)って言えるような雰囲気じゃないだろうし、そもそもそういう人たちが一矢に持ち掛ける縁談をブッた切る為のニセ婚なんだしね。
さあ、どんなご挨拶になるのやら。
「いいですか、伊織様。くれぐれも粗相がないように、お願いいたしますよ。三条様は昔から一矢様をご贔屓にして下さる、数少ない取引先様でございますからね」
リムジンを運転しながら、鬼が言った。
「解っているわ、中松(鬼)。出しゃばらないように、気を付けます」
ふうー。それ、耳にタコが出来るくらい何百回も聞いたし。
今までの私は、鬼松を睨みつけながら口いっぱいものを言っていたけれど、それは控える様にしている。そんな事をすると、般若みたいな顔になってしまって余計鬼に文句を言われるから。ちょっとでもそういう顔をすると、鬼から嫌味が飛んでくるのよ、すぐに。
ニセ嫁辞めたら、鬼に豆まきするかのように、文句の塊を投げつけてやるっ。
私はそう決めているのだ。そうする事によって、鬼に一々たてつかずに済んでいるから。
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