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「それとこれとは話が別です。さあ、行きましょう。きちんと一矢様にもこの様な事がなされたと、報告させていただきますから」
「それだけは・・・・どうかそれだけは・・・・」
ボロボロと泣きながら令嬢が私に向かって土下座してきた。「ごめんなさい、伊織様。貴女が羨ましくて・・・・何の家柄も無い貴女が選ばれたことが、妬ましくて・・・・」
えらく正直な人だな。どうせ無血統ですよ。
「つい、無礼を働いてしまいました。本当に申し訳ございません。どうか、一矢様には言わないで・・・・」
こんな事しておきながら、言わないでとか、バカじゃないの。報告されないワケないのに。
ご令嬢だから、パッパラパーなのね。脳内お花畑なんだわ。
でも、このお嬢様も一矢をずっと好いてきたのよね。それなのに、急にニセ令嬢がぽーんと出てきちゃあ、面白くないわよね。解る、うん、解るよその気持ち。それだけは同情できるけど、他はできませんからぁー!
「お顔を、お上げになって」
私の言葉に、土下座スタイルからお嬢様が顔を上げた。その顔を思いきり、バチーンと引っぱたいた。
「痛み分けですわ。これでお互い様ですから、お約束通り一矢様には言いません。でも、このままでは戻れませんので、レストルームをお借りいたしますわね。中松、すぐヘアセットをして頂戴。できるわね?」
「はっ。すぐに」
「行きましょう」
中松を連れて令嬢を放置し、その場を後にした。
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