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「大きくて持ち運び難いけど、大丈夫?」
「あー、いい、構わん」
受け渡しの際、一矢に手が触れてしまった。
「あっ、ご、ごめんなさい」
愛妻弁当と言われたのがダメージ大きかったのだと思う。何だか恥ずかしくて、真っ赤になってしまった。ぱっと手を戻して、俯いた。
「あー、その、なんだ・・・・」
一矢も折角セットした銀髪が乱れるくらい、頭の後ろをぼりぼりと掻いている。「弁当、楽しみにしている。明日もまた私の為に作ってくれ」
「は、はい・・・・」
何だこの空気。恥ずかしいよぉー。
「では、伊織。行ってくる」
「あ、はい! 行ってらっしゃい、旦那様(ニセ)!!」
笑顔で手を振って見送った。
「伊織も修業を頑張るのだぞ。期待している」
リムレスフレームの眼鏡の角度を整え、キリッとした姿勢になった一矢は、中松に自分の持っていた恐らく重要書類であったりとか、様々入っている鞄の方を託し、風呂敷に包んだお弁当の方を大事そうに抱えて出て行った。
・・・・よっぽど、お弁当が好きなのね。
ふふ。
明日は旦那様(ニセ)のリクエストを聞いて、もっと喜んで貰えるお弁当を作ろーっと!
そして、一矢を会社に送り届けて戻ってきた鬼松にボロクソにしごかれるニセ嫁であった。ちーん。
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