15人が本棚に入れています
本棚に追加
「さっきの亡くなった患者さん、なんだったんだ?」
昨日から当直で入っていた同僚は疲れた顔で、
「ああ、TA(交通事故)で急性硬膜下血腫だったよ。お前がいつも通り間に合っていれば手術できたかもしれなかったんだが……」
「そうか。今日は事故渋滞に巻き込まれてどうしようもなかった。でも、申し訳ない」
「いや、お前が謝ることじゃない。全て運命だよ。いちいち、感傷に浸っていたらこんな仕事続けられない」
「何年やっていても、その感覚にはなかなかなじめないよ」
「お前は優しいからな。じゃ、俺はあがるぜ。あとを頼むな」
「おう、お疲れ様」
その日は珍しく救急車もあまり来ず、朝一のあの患者以外に重症者も来なかった。
当直室に入り、ベッドに寝転びながら朝の出来事を思い返す。
はぁ、今朝の患者さん、残念だったな。
渋滞さえなけりゃ………、っていうより、あと5分寝なけりゃ渋滞に巻き込まれず、助けられたかもしれない。
俺の責任だよな………
神様、すいません。
患者さん、すいません。
神様、次はあと5分とか寝たりしません。
最初のコメントを投稿しよう!