始まりの中学時代

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 彼らは席替えに命を注ぐあまり、自分のことしか考えていないのだ。あれは一種の戦争であり、エゴとエゴのぶつかり合い。己の利益だけを賭けた生存競争と言っても過言ではない。それは当然教室内の暗キャラ達を巻き込むのである。  ーーここで一つ、俺自身が体験したおぞましい体験を話すとしよう。あの出来事は思い出すだけで身震いがする程だ‥‥。  あれはいつも通り、席替えが開戦する時のことだった。俺は祈りながらクジを引いた。そこまでは良かった。壁際のベストな位置を引き当てる己自身の運を祝福していたものだ。  問題はこの後起きたのだ。クラス内の中心的な女子生徒が不運にも俺の横の席を引いてしまったのだ。その周りも大人しい生徒達で固まっていて、俺としては平和で嬉しい結果だったが、どうやらその女子生徒は気に食わなかったらしい。  嫌だ嫌だと駄々をこね始め、しまいには俺の隣が嫌だと泣き出したのだ。あれは間違いなく号泣というやつだった。  当然こうなると、他の陽キャラ達が黙ってはいない。自分たちは良い席になり満足しているくせに、ここぞとばかりにその女子生徒の為に騒ぎ立てる。  そうして何故か俺が悪いと言った風潮が流れ始める。何もしていないのに、「あーあ、青春やっちまったよ」みたいな空気が教室内を包み、形見が狭くなる。あれはなんて言う地獄なんでしょうか?  そんな思い出が俺の中では、中学の思い出の二割を占めている。  残りの八割は密かに好きだった女子の消しゴムを拾った時、引きつった笑顔でお礼を言われ、その消しゴムを濡れたティッシュで拭かれた事と、打ち上げの類に一度も声すらかけられなかった事。  朝の毎日の点呼の時に、先生に名前を呼ばれなかったことが34回あることだ。これは呼ばれなかったたびにメモを取っていたので、間違いはない。  その他にも修学旅行の班決めも最後まで俺が残り、押しつけあいにされたことや、クラスの女子のリコーダーがなくなった時に、真っ先に疑われたことが記憶に残っている。
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