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現実はトゥルーエンド?
ぱーん!
女の子の手を叩く音で目が覚めた。ものすごくいい夢だっただけに、現実に戻ってきたのがものすごく残念に思った。
「いかがでしたか?」
「とても素敵な夢だったよ。でもいいところで終わって残念だ。あと5分だけ続きが見たいな」
「それは出来ません。寿命をいただくと同時に体力を消耗させてしまうので、夢を見させてあげられるのは1日1回だけです。鏡を見てごらんなさいな」
彼女に促されて自分の顔を見ると……、朝バッチリ剃ってきたはずのヒゲが無精ひげになってしまい、髪もセットしてきたはずがボサボサ頭になっている。
さらに身体もだるく、ものすごい空腹を感じる。あれだけやけ食いしたはずなのに。でも時計を見ると5分ほどしか過ぎていない。そこにさっき頼んだフレッシュトマトのスパゲティが運ばれてきた。
「私は一口でいいので、どうぞお召し上がりください」
あとから考えれば、自分で頼んだものにお召し上がりも無いものだと思ったが、とにかくものすごい空腹だったので、ガツガツとかっ込んでしまった。
食べ終わる頃、ぼくのスマホが鳴った。リコリスさんからのLINEだ。
『ごめんなさい! 小説の締め切りが迫ってて徹夜して起きれなくて……! お会いするのは来週で良いですか?』
すっぽかした訳では無いとわかるとなぜかホッとした。ぼくは『わかった。また来週改めて』と返すと、ゴシックドレスの彼女に別れを告げた。
「何かあればまたいらして下さいね。私はいつもこの店に居ますから」
いつもと言うのが少し気にかかったが、彼女の見せてくれた夢のようなことが起これば良いなとこの時は思っていた。
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