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「実は私、もうすぐ結婚するんだ。彼は北海道の人でね、私も来月にはそっちに行くことになってるんだ。それで、今さらなんだけど、急に怖くなっちゃって……、環境が変わると小説書けなくなったりもするって言うし」
「!!?」
なんということだ、まさか婚約者が居たなんて……、現実はそんなに甘く無いということか。今までのバラ色の気持ちが一気に吹き飛んでしまった。
「それでどうしたらいいのかなって思ったの。あなたになら相談できるかなって思って」
あまりの出来事に、ぼくは自分の気持ちを封じ込めるしかなかった。好きだと言ってしまえば、彼女はさらに混迷してしまうだろう。
とは言えどうしたものか。しばらく互いに無言だった。自分の頭をくるくると回しても何も浮かばず、海に聞いても答えは出てくるはずがない。
ん、誰かに聞く……!? サイゼリヤに居た彼女のことを思い出した。そうだ!
「問題の解決になるかどうかはわからないけれど、こういうことを相談できる人なら知ってるよ」
「本当? その人に会わせて欲しいな」
心に落ちる涙をグッとこらえて、ぼくと梨花さんは再び電車に乗り、あのサイゼリヤへと向かった。
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