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梨花さんの夢
気がつくと私は、どこかの家にいた。
居間と寝室、それに台所、バストイレ別と、そこそこの家。
テレビから「石狩・空知・後志地方の天気は……」と、アナウンサーの声が流れてきた。
テーブルの上にはカレーライスとポテトサラダが並んでいる。私が作った……のだろうか?
「ただいまー」の声とともにドアが開いて彼が帰ってきた。部屋着に着替えて、これから2人でご飯を食べるようだ。まずは奥様らしく振る舞うとする。
「お帰りなさい。冷めないうちにどうぞ」
「ありがとう」
2人でカレーに手をつける。ん……美味しい! 彼にカレーを作ってあげたことはあるが、野菜の味がルウにしっかりとしみこんでなんとも言えない風味だ。ここまでのものはこれまで作ったことがない。もしかして作ったのは彼ではないだろうか?
「美味しい……、あなたが作ったの?」
「おいおい、お前が作ったんだろう? 俺は仕事してたんだから」
なるほど。そういわれてみれば確かに。苦労して作った……と思うポテトサラダもこれまでに食べたことがないほど美味しい。
私の料理の腕が急に上がったとも思えない。そこでふと気付いた。そうか、材料がいいのかと。
北海道物産展と聞いただけで行列ができるこっちと違って、ここなら北海道産の食材がいつでも手に入る。だからこんなに美味しいのか。
「いつも美味しい食事をありがとう」
「いやだわ、急に」
「皿洗いは俺がやっておくよ。締め切り近いんだろ」
「ありがとう、いつも悪いわね」
「ううん、いいよ。これでお前に友達が出来れば言うことはないな」
そうか。北海道にはお友達はいない。けれど、笑顔で家に帰ってきて、ご飯を美味しいと言ってくれる彼がいれば……
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