なおちゃん

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 ここは市内から電車で1時間くらいの町。僕が2年生の時に、お父さんの転勤で引っ越してきた。  それから3年。来年になったら最上級生だから、今からしっかり『責任感』を身につけましょう、と担任の山口先生は言う。  責任感って、なんだろう。  まだ言葉の意味を理解できないまま、それを聞く度に、少しだけ信頼されて誇らしいような、それでいて緊張するような気持ちがした。  知らない誰かからのプレッシャーに、答えなければという心構え。それはいつのまにか植え付けられた正義感だったのかもしれない。  僕は自転車を店の前に立て掛け、急いでガラスの戸をスライドさせた。  中からヒヤッとした空気が滑り出してきて、火照った顔に気持ちがいい。 「おばちゃーん! サイダーちょうだい!」  おばちゃんの姿が見えないから、店の奥に向けて大きな声を出した。間もなく、そっちから足音が近づいてくる。 「ごめんごめん、サイダーね」 「…………!」  そう言って、ラムネ瓶を持ってきてくれたのは、雛おばちゃんじゃなかった。  お腹が大きな、若い女の人だった。色白で、長い髪を右耳の下で一つにまとめていて、少し吊り上がった目はパチっと大きかった。  なぜか僕はムスッと俯いて、100円玉を渡していた。視界に入ってくる青い瓶を不貞腐れた様子で受け取り、蓋の玉押しでビー玉を押し込む。そしてその場でグビグビと飲んだ。
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