なおちゃん

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「いつものおばちゃんはね、今、奥でお昼ご飯作ってるんだ」  指差した奥は、おばちゃん()の台所らしい。耳を澄ますと、開いたガラスサッシの向こうから包丁の音がしていた。 「私は、ここが本当のお家なの。赤ちゃん産むために帰ってきたのよ」  おばちゃんはどうしたのか、あんたは誰だ。  そんな簡単な質問もできない僕だったけど、すぐに答えを得た。 「いつも、買いにきてくれてるの?」 「うん」 「何年生?」 「5年生」  単語で答え、サイダーを飲み干した。ちょうど奥から「なお」と、おばちゃんの声がして、女の人が振り返った。 「ほかに何か買う?」  僕は首を横に振り、ガラス瓶を突き返して店を走り出た。  なおちゃん。    クラスの美香とか陽ちゃんも可愛いけど、「なおちゃん」は、なんか違った。
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