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「~~~~っ!!」
あまりにも唐突な言葉のせいで、俺は椅子ごと仰向けに倒れてしまった。
「ちょ、大丈夫!?」
「……あぁ、何とか」
「喋れるなら心配いらないね」
「お前な、誰のせいだと――」
起き上がり、目に入った顔を見て、俺は言葉を失った。
俯き、唇を噛んでいる。目の錯覚なんて言葉で片付けられないくらいに、頬を赤らめて。
「お前……」
「へへ、言っちゃった」
髪の毛を指でいじりながら、小さく笑う。
コイツが恥ずかしさを誤魔化したい時にする癖だ。俺だって、伊達にコイツのことを見てきてない。
「あ、これ冗談とかじゃないから」
「え」
「私、本気だよ」
「…………」
友達以上、恋人未満。
友達よりも素を出せて、恋人同士みたいな面倒なこともない、心地良い関係。
(でも、本当に?)
ふと、思い出した。高校の時、コイツに初めて彼氏ができた時のことを。
得意げに自慢してきて、まだ彼女いない歴0年の俺に『お先ー!』とか言ってメッチャからかってきたんだ。
当然俺は怒ったけど、不思議なことに、本気で怒ってはいなかった。
むしろ、胸の奥底から込み上げてきた何かを押し殺すのに必死だった。
後で思い返して、気付いた。
これは、嫉妬だって。
(……何で、忘れてたんだ?)
いや、違う。忘れてたんじゃない。
思い出さないように、してたんだ。
『ずっとこのままって、キツくない?』
コイツの言葉が、急にすとんと腑に落ちた。
あぁ、そうだよ。キツイ。
もう、あんな思いはごめんだ。
「……俺は」
「俺は?」
「……の……す……」
「え、何? 聞こえな――わっ!」
目の前にある肩に手をかけ、乱暴に引き寄せる。
「え、えっ!? ちょ、ゆーちゃん!?」
「実花のこと、好きだ」
言うことだけ言って、俺はサッと実花から離れた。実花の真っ赤な顔を見て、自分がやったことの重大さを否応なしに突き付けられる。
(あぁ、くそっ! 何だって俺がこんな思いを……!)
「な、何やってんのっ? い、いきなり抱きしめるとか……」
「……先、越されたから。癪だったから」
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