プロローグ

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プロローグ

 ぼくの周囲には、学生時代に戻りたいって言う人間が多い。「大学時代は遊びまくったなあ」「高校三年間が人生の黄金期だった」「中学時代の甘酸っぱい青春が懐かしい」「小学生の時はある意味無敵だった」──などなど。  ぼくはどうだったかって?   一番マシだったのが高校の三年間。専門学校の二年間もまあまあ。小学校の六年間と中学の三年間は何の価値もないし、思い出したくもない。  だから、戻りたいなんてこれっぽっちも思わない。  ……って言ったら嘘になる。  高校三年の八月、暇を持て余していた最後の五日間。  あの五日間に戻してあげられるけれど、どうする? なんて神様にでも言われたら、ぼくは戻ると答えるだろう。  あの夏は、今年の夏のように涼しかった。
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