エピローグ

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エピローグ

 今年の夏は一〇年以上振りの冷夏だ。  数年振りに実家に帰省したぼくは、リビングでくつろぐ両親を置いて散歩に出た。駅前はそれなりに変化しており、本屋はなくなっていたけれど、コンビニとホープの服を買った店は残っていた。  ぼくはコンビニで三人分のアイスクリームを買うと帰路に就き、その途中、あの裏道へ入った。  あの日ホープと別れてからも、何度か通りはしたものの、現実を受け入れるようになるにつれ避けるようになった。今日歩くのは、冷夏と同じく一〇年以上振りだ。  空き地には家が建っており、子供のはしゃぎ声が聞こえた。 「アイスクリームでしょ。溶けちゃうよ」  しばらくの間、ぼんやりと家を見やっていたぼくを我に返らせたのは、中性的で懐かしい声だった。
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