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弱く抵抗する彼の手を払って、首元に噛み付く。喉元ではなかったのは、何故だろうか。まだ呼吸をしていてほしいとでも思ったのか。
「あ、…うぁ…はあ、…あぁ」
吸われる感覚はあるのだろう、彼が喘ぎ声を洩らす。おれは、何故かその声にどぎまぎした。
──何だ、これ。
今までには無い、独特な感情がおれの中を支配する。どうしてか、興奮する。
でも、もうすぐ終わってしまう。
足りない。これじゃ足りない。
もっと──頂戴。
おれは、自分で無意識的に呪文を唱えていた。
『生き返り』の呪文。これは本来人間ではなく、仲間のうちで使うもの。けれど、さっき血を吸った時に、おれの血を混ぜて送り返したから、少しは【仲間】として成り立ってはいるだろうと考えた。
どうか、どうか生きてくれ。
「かはっ…」
彼が吐血する。苦しそうな呼吸はいくらか落ち着いてきているため、どうにかなったようだ。
やっぱり。見ていると己の性に逆らえない。
我慢できずにそれを舐めとる。そして、そのまま彼の口内へ舌を突っ込んだ。血の味が、おれの中を満たす。
…美味い。
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